労働者派遣


同一労働同一賃金

2018年6月に成立した「働き方改革関連法」において、法制定の一環として、派遣労働者やパートタイム労働者・有期雇用労働者に対する「同一労働同一賃金」制度が発足しました。派遣労働に対しては2020年4月1日から一律に適用されることになり、「派遣元資格」を有する当社も、この制度に対応しました。



労使協定を締結しました

派遣労働者への同制度の適用について、当社は、一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定の締結によって、均等・均衡の取れた待遇を実現することとしました。当社に属する正社員・準社員・派遣社員・専業フリーメンバーなどから自薦・他薦の手続きを経て労働者代表を選任し、討議の過程では多くのメンバーから自由な意見が寄せられました。代表との協議を重ねた結果、労使協定の締結にいたり、4月1日以降、以下の諸点が実現されています。


●通勤交通費を実費支給します

これまで派遣労働については、交通費を賃金のうちに含む事例が多く見られました。当社も例外ではありませんでした。このたびの協定で、日雇派遣も含めて交通費は実費支給することとし(1ヵ月分の定期券購入代金ないし就業日の日数に応じた往復交通費。ただし上限を2万円とする)、多くの派遣先企業の協力も得て、4月1日以降、実費支給が実現されています。


●退職手当を含んだ時給設定とします

これまでの派遣時給設定においては、退職金・退職手当は想定の対象外であり、派遣先から支給される時給金額のみを基本として時給が決定されてきました。今回の協定により、時給に「退職手当」を内包した金額設定が求められることとなりました。

この退職手当とは、一般基本給・賞与等の「6%」の額が、「前払い退職金」と見なされています(労働政策審議会答申に基づく)。しかしこれは、従来の派遣時給に「6%上乗せされる」という意味ではありません。当社の実際の時給設定が、「6%の前払い退職金を含んだ一般校正労働者の賃金と同額ないしそれ以上」と判断されれば、従来通りの時給金額でよい、ということです。

今後の時給設定について、一般の校正者よりも著しく低く、「到底、前払い退職金を内包していると見なされない」ということの決してないように、さらに努力します。


●有給休暇を付与します(時間単位取得も!)

長期常駐勤務が開始された日から6ヵ月間継続勤務し、所定労働日の80%以上出勤した労働者に対しては、7ヵ月目から10日の年次有給休暇を与えます。以降、一般の有給休暇と同様に、継続勤務1年ごとに1〜2日ずつ加算し、上限を20日とします(ヴェリタ就業規則第40条別表)。また、のべ5日間を限度として、2時間単位の休暇を取ることも可能です。ただし、前日までに派遣先所属長に届け出し、合意を得てください。


●慶弔休暇も取得可能

本人・配偶者の結婚や出産などの慶事、逆に家族や親族に不幸があったときは、慶弔休暇(いわゆる忌引休暇)を与えます(条件により2日〜5日)。親族については、祖父母・兄弟姉妹・配偶者の父母までとし、伯父伯母(叔父叔母)や従兄弟従姉妹は含みません。また、休暇の途中に休日がある場合は、その休日を含むものとします。


●勤務評価と昇給を

同一労働同一賃金労使協定締結にあたって、政府〜労働局側から強く求められたのが「経験の蓄積・能力の向上があると認められた場合」の「昇給」の可能性明記でした。

当社では、派遣先から昇給が行われた場合はもとより、2019年の消費税改定に際して、消費税分を上回る昇給をおこなうなど、派遣労働者の賃金向上に際しては力を尽くしてきましたが、今回は特に、「年に一度、勤務評価を行う」こと、向上があると認められた場合は「基本給額の0.5〜2%の範囲で増額を行う」ことと取り決めました。


●法的な整備も進めています

こうした労使協定の締結を、会社の法務・財務の現状にそぐうものへと反映させ、確定していくために、会社の法律である「株式会社ヴェリタ従業員規則」の改定を進めています。

「派遣社員就業規則」については、都合4度目の改定を行いました(労働基準監督署に届け出済み)。

同様に、「派遣社員給与規程」も新たに制定、これらと足並みを揃えて「株式会社ヴェリタ従業員規則」の本体についても、現状に即して必要な改定をおこない、この夏頃までには「新・規則」としてまとめる予定です。



校正者は「印刷作業員」か?!

今回の労使協定をめぐる社内協議の中で、一番の関心事となり、議論を呼んだのは「校正者」の位置づけでした。厚労省から提議されている2種類の「職種」統計データには掲載がなく、改めて東京労働局に問い合わせて得られた答えは、「H 生産工程の職業 54製品製造・加工処理 563印刷・製本作業員」の一種である「563−09校正作業員」というものでした(「職業安定業務統計調査」による)。

「私は自分が『印刷・製本作業員』とは認識していなかった!」という悲鳴のような声があがりました。

このホームページの「社長挨拶」の中でも、“校正業は「書籍等の制作・編集」業務において「校正等を専ら行うような補助的な業務」と言いなされ、補助的な単純労働と見なされているので、この規定を撤廃してほしい”、と述べています。この規定は労働者派遣法に基づくものですが、いずれにせよ校正者の生産過程における評価は、「編集者」や「記者」などに比して、決して高いものではありません。それは何よりも、校正労働の報酬の低さとして、厳しく突きつけられています。 これを乗りこえていくために問われているものは何か。真摯な声が寄せられているので最後に掲載します。




校正者は専門的・技術的な仕事では? ――同一労働同一賃金協定に思う――


労使協定調印とのこと、承知いたしました。

厚労省の職業分類による職種では、私たちは「校正作業員」ですね。

昔、ハローワークで仕事を探していたとき、「校正」の分類があるのを知って単純にうれしかった記憶がありますが、給与水準は低いところが多かったように思います。

校正作業員……引き合わせ校正が中心だった昔の校正のイメージがそのまま残っている気がします。

「印刷・製本作業員」の中のひとつになっていますが、個人的には校正者は専門的・技術的な仕事だと思っています。

数年前に放送された校閲のドラマなどの影響もあってか、校閲の仕事の認知度は昔より高くなっていると感じます。校正・校閲に関するセミナーや講座なども人気があり、本業が校正という人は少ないのかもしれませんが、この仕事に興味がある人は多そうです。

校正・校閲の仕事とは実際にこんな仕事だと世間に広く知ってもらうこと、校正者である私たち一人一人がこの仕事に誇りをもって、誠実に取り組むことが大事なのではないかと思います。

そして職業分類での「校正作業員」が、いつか「“専門的・技術的な”校正者」に変わっていき、給与水準も上がっていったらいいですね。

校正の勉強を始めてから30年以上がたちますが、まだまだ修業中です。今まで身につけた知識をアップデートし、技術を向上させて、今後の仕事に生かしていきたいと考えています。

(KatsujiとRuby)